日本語で読めるインドニュース 『インド新聞』
  1. ニュース
  2. インドビジネスコラム
  3. インドリサーチ
  4. プレスリリース

インド国内トップを走るヒーロー・ホンダ(前編)

前編 農村部を積極展開、巨大市場を開拓

順調に拡大し続けているインド二輪車市場。二輪車需要は従来の都市部に加え地方・農村部にも拡大し、成長は加速し続けているという。1984年に本田技研工業とヒーロー・グループの合弁企業として設立されたヒーロー・ホンダは国内シェア50%を押さえ、国内トップに位置する。いまや、その生産規模は世界最大を誇る。成長目覚ましいインド二輪車市場をリードするヒーロー・ホンダの中川敏彰共同執行社長に、インド市場について語ってもらった。

インドを走るバイクの3台に2台はHonda

御社のインド進出の歴史と現状をお聞かせください。

中川:ヒーロー・ホンダは本田技研工業とインドのヒーロー・グループの合弁会社として1984年に設立されました。2001年頃まではインドのバジャージが圧倒的なシェアを持っていましたが、いまでは逆転、国内シェア50%を超えています。本田技研工業独資のホンダ・モーターサイクル・アンド・スクーター・インディアを加えると、二輪車市場におけるHondaブランドのシェアは65%超です。また、インド国内の生産規模は世界最大級となっています。

インドでは4~7年くらいの単位で買い替えのサイクルがあると見ています。ヒーロー・ホンダ車はホンダ品質に加えスペア・パーツの入手が容易であること、ディーラー・ネットワークが全国に完備していることなどから、長く使える安心のブランドとして定着しています。

現在2位のバジャージを抜いてから、ずっとインド国内トップなのですね?

中川:2006年頃にシェアで言うと8%程度の差まで詰め寄られましたが、いまでは再び引き離しつつあります。お陰様で現在では、インド国内を走っているバイクの3台に2台はHondaブランドとなってきました。

他社のことなのであまりコメントしたくありませんが、バジャージが失速した原因で、私なりに思い当たる点は、いくつかありますが、新モデル等の一時の激しい値引きが影響していると思います。インドでは再販価値が購入決定の重要な要素なのです。値引きによって再販価値を自ら下げてしまっているのではないかと見ています。

2008年4月にハリドワール工場の操業を開始したそうですね?

中川:税制優遇が受けられこともあり、ハリドワールに第三工場を新設しました。現時点で年間100万台の生産台数まで来ています。操業間もない状況ではありますが、生産品質も高く保たれており、今後の拡大を期待しています。現在では、インド国内で既存の第一、第二工場で年産390万台体制なのですが、この第三工場の能拡を加え今期末で年産能力を合計540万台レベルにすることを目標としています。

パキスタンやバングラデシュなど、インド近郊への輸出も視野に入れているのでしょうか?

現状、インド国内ですら品薄状態が続いているので、インドを製造拠点として積極的に国外展開することはあまり考えていません。

先日、セールス・コンペティションで勝った優秀なディーラー100組のご夫婦を対象に香港・マカオへの褒章旅行を行ったのですが、その場でも「早く配車して欲しい、車が足りない」というご要望を多くいただきました。

農村部向けプロモーションで巨大市場を開拓

最近では、地方や農村部での二輪車需要も旺盛のようですね。

中川:農村市場は非常に大きく、需要も高いと見ています。プロモーションも重点的に実施しています。昨年秋時点で500人を超える農村攻略の特別部隊をディーラーの中に組織しました。

具体的にはどのようなプロモーションを行っているのでしょうか?

中川:ディーラーと一緒にさまざまなキャンペーンを展開しています。オピニオン・リーダーや村長向けの説明会で口コミを喚起したり、無料点検キャンペーンやお祭りのようなイベントを開催しています。

また、CSR活動として地方・農村を対象に健康チェック・サービスを展開しています。バイク点検も無料ですれば、他の国では考えられませんが、現地の強い要望で、一部簡単な人の健康チェックを無料でする、こともあります。

都市と農村では消費者の嗜好も違うと聞きます。農村ならではの工夫していることを教えてください。

中川:農村でのキャンペーンやプロモーションでは、「ランチ付」など食事をセットにすることもあります。派手な装飾を施したり、ともすればうるさいほどの音楽を流したりと、地域の方に受け入れられるような工夫をしています。

こうしたプロモーション施策は、インド人スタッフのチームが積極的に企画し、展開しています。

農村部のプロモーションは効果が出ていますか?

中川:いろいろな施策を打っているので、着実にパイは大きくなっています。

いままでは地域の銀行とローン提携をして買いやすい環境作りをしたり、ブランドの認知度向上のための、様々な施策を行ってきましたが、現在ではやはり地道な地に足の着いたプロモーション作戦の方が効果をあげていると実感しています。

農村の方々の間では、二輪車の付加価値は向上しています。二輪車を手に入れて、収穫した作物を遠くても高く売れるところまで持ち込む方が得だと広まってきている事例もあります。

また、ダウリー(編集部注:結婚時に花嫁の父親から花婿側に渡す持参金や持参品)の持参品のひとつとしてもバイク、特に弊社のベストセラー車スプレンダー・プラスは圧倒的な地位を占めています。今年北部では4月から6月にかけてダウリー需要で販売を大きく伸ばしました。

ローン依存度が下がっているのでしょうか?

中川:最近、特に農村では現金支払の方が多く、銀行のローンなしで売れる環境になってきました。

1年から1年半ほど前までは、バイク市場全体でローン利用者は60~70%でしたが、最近、弊社では15%程度までローン利用者の比率が落ちています。

それでも、ローンに頼らずに買える、農村の購買力が着実についてきていると感じています。

おう盛な需要を活かし、王道プロモーションで確実に成長

村部で地道なプロモーションを展開する一方で、クリケットなどを使ったキャンペーンも展開されていますね?

中川:インド人なら誰もが好きなクリケットやボリウッドスターを使ったキャンペーンも展開しています。クリケットの国内リーグやワールドカップのスポンサーをしていますが、クリケットを見ている人たちはバイク顧客層と重なっており、効果が高いと見ています。

また、ゴルフのヒーロー・ホンダIndian Openのスポンサーもしています。ゴルフはどちらかと言えば、四輪車顧客層のほうがフィットするとは思いますが。さらに今期は久しぶりにホッケーのワールドカップがインドで開催されることになっており、そのスポンサーも予定しています。

ホッケーはクリケットと同じ顧客層ですからね。

農村部では地道な展開でしたが、王道のプロモーションも積極的なのですね。

中川:インドの二輪車市場は、まだまだ大きく拡大するとみています。奇をてらった突飛な戦略を展開するよりも、おう盛な需要を活かして、その波に乗っていくことの方が今は重要だと考えています。

最近、北部市場で伸びているそうですね?

中川:過去、弊社は北部市場が弱かったので、ここ2年近く、重点的に北部攻略の地域戦略を展開して来ました。パンジャブやデリーなどの中でも特定地域でトレンド作りをしたことが功を奏しています。また、新モデルの優先配車をしたり、地域事務所の強化を図ってきました。最近の全体の成長率は28%程度なのですが、北部地域では弊社は40%以上の伸びを示しています。

デリーでも特にパッションというモデルを中心に、ヒーロー・ホンダのバイクを以前より多く見かけるようになってきていると思います。

インタビュアー :インフォブリッジ代表・繁田 奈歩