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キヤノン・インディアの成長戦略(前編)

前編 都市別マーケティングでシェア拡大

1997年、キヤノン・シンガポールの子会社として誕生したキヤノン・インディア。現在では7都市にオフィスを構えるほか、販売網は4,000店を超える規模となっている。2008年度の売上高は前年比31%増となる約130億円(66億5千万ルピー)、09年度も約20%の成長を見込んでいる。インドで成長・拡大し続けるキヤノン・インディアの戦略を、小西謙作社長に伺った。

インドはコスト・コンシャスなマーケット

現在の御社のビジネスの状況を教えてください。

小西:弊社は当初シンガポールよりエージェントを通じて間接的にインドに参入していましたが、1997年にインドに本格的に参入しました。コピー機からスタートし、プリンター、カメラ、業務用の大型印刷機などを展開しています。現在ではグルガオンの本社以外に、7都市にセールス・オフィスを構えています。従業員は700人を超え、数年で1,000人規模になると思います。販売網は2008年12月に4,000店を超え、300都市をカバーしています。

コピー機、カメラ、プリンター、法人向けソリューションなど幅広く展開していますね。

小西:現在はコピー機が約40%、カメラが約40%、プリンターが約20%という商品構成になっています。コピー機などは、中小企業(SME:Small Medium Enterprise)から政府、一般企業まで幅広く展開しています。

従来は商品群ごとに営業部隊を組織していたりしていましたが、最近では、お客さまのターゲットによって、商品をクロスセルできる部隊を用意したりもしています。

インド市場に対してどのような印象を持っていますか?

小西:インドはブランド重視と言われる一方で、コスト・コンシャスなマーケットだと感じています。ブランドや機能よりも価格が重視されることが多い。特に、最近はこのような景況感なので、より一層コスト・コンシャスになってきています。

例えば、最近では単なるプリンター販売ではなく、印刷を集中管理しコスト管理を実現するMPS(Managed Print Service)がインドで受け入れられています。こういった新しいサービスは、弊社とゼロックスさん、ヒューレッド・パッカードさんくらいしかやっていません。

インドの流通革命「モダン・リテール」は「種」の段階

ショールームも開設しているそうですね?

小西:インドの店頭のディスプレーはまだまだ雑なところが多い。このため、三大都市からTouch & Playができるショールームの展開を始めた。ここで直接の販売はできないが、効果はあがっています。

写真:グルガオンの「Canon Image Lounge」
(写真)グルガオンの「Canon Image Lounge」
写真:グルガオンの「Canon Image Lounge」

インドの流通について教えてください。 

小西:昔ながらの小規模店舗、属人的な販売手法が根強く残っています。Croma(タタ・グループ)やReliance Digital(リライアンス・グループ)のように、海外資本や財閥資本などが大資本を投下したチェーン展開の動きもあります。

インドで「モダン・リテール」と言われている、量販店やハイパーマーケットをどう見ていますか?

小西:売上もあがってきていますが、マーケット・シェアはまだまだで、やはり地場の都市に根ざしたConsumer Electric Chainと呼ばれる小さな家電店が一般的です。

モダン・リテールはインドの流通革命と言われていますが、実際は革命まではいっておらず、革命の「種」の段階だと見ています。

「モダン・リテール」はうまくいっていない?

小西:全国区のディストリビューションチャネルは、必ずしもうまくいっているとは言えないと思います。要因としては、単店と比べたときのコスト高があげられます。リテールの利益水準が低いこともあり、チェーンの拡大ペースが遅くなっている。

また、景気がこのような状況なので、やはり地域に根ざしたリテールチェーンやConsumer Electric Chainの方が強い。州単位での法的規制が強いことも、展開スピードを阻害している要素かもしれません。

都市別マーケティングでシェア拡大

最近、「Manaハイデラバード」というキャンペーンを展開されたようですね?

小西:都市ごとにヒト・モノ・カネを注力し、地域の販売を短期的に立ち上げるプロジェクトとしてスタートしています。デリー、ムンバイなどに展開し、今回はハイデラバードでやりました。

写真:Canon Mana hyderabadイメージ 写真:Canon Mana hyderabad

単純に土地の言語でセールスするだけではないのですね?

小西:基本的なコンセプトは全国展開の方法と同じですが、インドは地域単位で言葉も商習慣も異なる場合があります。そのため、地域に根ざした言語体系でプロモーションや、ディーラーの力をうまく組み入れたキャンペーンなどを実施しています。

写真:地域に根ざしたプロモーション写真:プロモーションイメージ

具体的には、ディーラー・ワークショップなどを開催し、商品機能や売り方の講習をしています。店頭のロードショーにしても、地域のディーラーを積極的に参加させるプロセスを踏んで、モラルやロイヤリティの向上を図っています。

都市別マーケティング、効果は出ていますか?

小西:2007年後半より都市別のマーケティング展開を開始していますが、効果が出てきています。特にLBP(レーザービームプリンター)はキヤンペーン開始当時のシェア5~6%程度だったのが、最近では30%を超えています。

いままで、ムンバイを皮切りに、デリー、バンガロール、チェンナイなどの大都市圏を実施してきましたが、今後はインドールやチャンディガールといったTier2やTier3の都市へも拡大していきます。

最近では、チェンナイに注目しています。政府が製造業の呼び込みを戦略的にしていることもあってか、チェンナイが製造の基地になりつつあると見ています。

都市別マーケティングには、対象地域への理解が必要となりそうですね。

小西:デリーは比較的コンサバ、ムンバイやバンガロールは先進的で新しいものが好きなどと、いろいろな地域性が見られます。販売のピーク・シーズンが地域によって異なることもあるので、ディーラーとのキャンペーン展開方法なども変えています。例えば、北インドでは、ディワリというヒンズーの大きな祭りが販売のピークですが、南部の方ではもっと早かったりするなどの違いがあります。

インタビュアー :インフォブリッジ代表・繁田 奈歩