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インド新聞 コラム

10億人への道 ~インド、モバイルビジネス開拓記~

優秀な人材も多いインド

「インドには、優秀な人材が多い」

これは今インドが世界から注目されている理由の一つである。IT技術者を始め、非常に勤勉で野心家なインド人たちを「優秀」と評するこの意見にはまったく賛成だ。が、私はそれにもう一つ違った意見を追加したい。

「インドには、優秀でない人材も多い」

前提として省略されているのかもしれないが、「インドには優秀な人材が多い」とは、要は人口の絶対数の話なのではないか、と思ってしまう。さらに正確に言うなら、「インドは、ビジネス能力が高い人材と低い人材が両極端に分かれる。」と私は考えている。今回は「インド人の優秀さ」について思うところを述べたい。

現在ゼロ・サム・インディアが取引している会計事務所は2社目になる。どちらも現地の事務所であり、我々には数人のインド人担当者が付いていたが、1社目の会計事務所のサービスは満足のいくものではなかった。ゼロ・サムの、インドでモバイルコンテンツを配信する事業は日本初であるため、情報が少ない中で、日本の法務、労務、財務などと調整しながらインドの経営を管理するのは非常に大変だった。州政府と中央政府の両方が関係する税制の処理には特に苦労し、特大のインド会社法の本である「Companies Act」を直接紐解くこともしばしばであった。

悪戦苦闘する我々をよそ目に、現地会計事務所の担当者からはなんとも頼りないアドバイスしか得られない。実際に現地で彼らの仕事ぶりを見たところ、例えば財務諸表の作成に関しては担当者が表作成ソフトに数字を事務的に入れていくだけなど、あまりにもお粗末なその仕事ぶりに驚いたことを記憶している。

その後、外資企業との付き合いにも馴染みのある会計事務所にパートナーを変更したが、当事務所の担当者は、不勉強な私の再三再四の質問にも辛抱強く対応してくれ、的確なアドバイスを提供してくれている。それまで数週間かけていた処理が3日で解決した時などは以前との差にあっけにとられたものである。

会計士や法律家といった専門職に限らず、インドは人によってビジネスレベルの差が極端に開いているように感じる。この両者の違いはどこに端を発しているのだろうか。「第1回コラム:インド時間」でも取り上げたが、一つは彼らのビジネスに対する意識の差もあるのだろう。しかし、自分のことはまったく棚に上げて僭越ながら意見すると、より本質的には「並列的な処理ができるか否か」が両者の分水嶺になると私は考えている。

具体的に言うと、優秀だと思える人は複数のタスクを並列的に処理し、リスクなどを予見して常にいくつかのプランを用意しながら業務を進めるのに対し、頼りない人は逐次的な処理しかできず、まるでただ一直線にトンネルを掘るように、その時々で起こる問題を一つずつ解決しようとしてしまうのだ。並列的な処理ができる人は、その後に発生しうる問題とその解決のスケジュールを合わせて、取るべき選択肢を明確に提案してくれる。一方、全体を見ないままに頭から逐次的に処理しようとする人は、どこかで業務が詰まってしまうと、そこが解決するまで次のタスクに移ることや、全体の絵から代替的な解決策を提案することができない。また、複数のタスクを同時に依頼すると、穴だらけのチーズのようなアウトプットを返されてしまうことがほとんどなのである。

この「並列的処理ができるか否か」という差は多かれ少なかれ日本にもあるのだろうが、インド人にはより顕著に見られ、さらに私は、インドは並列的処理ができない人の割合がより多い、と感じている。

そして、その人が優秀か否かを見分けパートナーを選定することは、特に彼らの人的資質に依存する割合を増やさざるを得ない我々日本人にとって、インドで円滑にビジネスを行う一つの大きな、非常に大きな鍵となるのだ。

では、人材流動性が高いと言われるインドで、どのように早期に彼が優秀であるか否かを見分ければよいだろうか。

次に解決すべきはそのポイントであろうが、その考察はまた次の機会に譲ることにする。

あとは、同じように「日本人批評」のコラムを、私をモデルにしてインドで書かれていないことをただ祈るばかりである。

執筆者

塚崎 義直
株式会社ゼロ・サム 海外事業推進室

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