日本語で読めるインドニュース 『インド新聞』
  1. ニュース
  2. インドビジネスコラム
  3. インドリサーチ
  4. プレスリリース

インド新聞 コラム

ボリウッド・ムービー格闘日記

スターあっての映画:シャー・ルク・カーン

第3回コラムでは映画配給の仕組みを簡単にお伝えしました。掲載された後、少し心配に。

映画配給のシステム、このご時勢にも関わらず旧態依然としたそのもので、現在でも契約書も取り交わさないまま、映画が公開し、映画料(配給と劇場の取り分)の精算時にようやく条件をつめるということが日常茶飯事に行われています。ほかの業種、特にインドのようなビジネスマインドが大変高い国と取引していらっしゃる皆さんから見て、どうだったのか・・。どうか皆さま、映画に失望しないでくださいませ。

シャー・ルク・カーン

日本でもそうですが、映画は、内容はもちろんですが、見たいと思う初動で気持ちが動くきっかけの大きいものとして、好きなスターが出ているという要素ははずせません。日本で今、1番観客動員が多いのは誰でしょうか。もしかすると、「踊る大捜査線」などの“織田裕二さん”ではないかと思っています。今回のコラムでは、一部のマニアでは“日本の織田裕二”と呼ばれている(反論のある方もいらっしゃると思います)シャー・ルク・カーンについて、書きたいと思います。

インドでは仕事の世襲が普通なのは皆さんの方がご存じかと思いますが、映画界も世襲が一般的で、現在活躍してスターも2世のみならず3世というスターもいます。

その中でシャー・ルク・カーンはテレビ出身、自らでスターへの道を切り開き、激動のこの10年を、広いインド国内でトップスターとして君臨している、超人的なスターです。日本のように芸能界の浮き沈みが激しい国の住民から見ると、カーンに代わるスターは出てくるのか、心配になるくらいです。

1965年11月2日生まれ(レヴァティー)、蠍座。ニューデリー出身。イスラム教徒。テレビ作品「Fauji(軍隊)」で注目され、その後ムンバイへ移り映画界入り。デビュー作「Deewana(恋狂い)」で最もセンセーショナルな新人と騒がれ、スターへの道へ。日本では、1992年製作の「ラジュー出世する」が劇場公開されています。シャー・ルクの名を不動にしたのは、ストーカー役の「Darr(恐怖)」(1993)。その後いわゆる典型的なマサラ物から「Dil Se..(ディル・セ 心から)」(1998・日本でも公開)、「Hay Ram(神よ)」(2000)など芸術派路線まで幅広くこなし、ベストアクター賞を何度も受賞している演技派でもあります。1990年代の興行トップ10のうち、5本に主演といういわゆるマネー・メイキングスター。1995、1998、2002、2004、2007年の興行トップ作品はいずれもシャー・ルク主演。1995年主演の「DDLJ」はなんと12年以上のロングラン。かのタグホイヤーのアンバサダーにも選ばれ、インドを代表する文化人として欧米でも人気があります。映画スターが製作サイドまで一手に握ろうとする傾向があるインド映画界らしく、シャー・ルクも共同出資で製作プロダクション、DREAMZ UNLIMITED を設立。「Phir Bhi Dil Hai Hindustani(それでも心はインド人)」(2000)を製作、ヒットを飛ばしました。

ロンドン・パリにはろう人形が飾られ、クリケット・チームのコルタカ・ナイトライダーズのオーナーでもあるシャー・ルク・カーン。日本と比べてインドは広いといえども、その成功度度合いは、日本の芸能人を見ていると想像できないくらいパワーがあります。

インド人はなぜそれほどまでに彼が好きなのか? ファンへのインタビューなどでよく見られるのは、<隣のお兄さん>的な魅力です。誠実・明るい・ポジティブ・親しみやすさ。でももうひとつ忘れてはならないのが、もちろん出演作品の質もさることながら、嫌みのない<愛国心>の表現ではないかと思うのです。第2回コラムでマサラムービーの特徴を列記しましたが、それに加え、インド人の皆さんの心にあるもの、見たいものはいつ、どこにいても<インド人としての誇り>を再確認できる表現ではないかと思うのです。今回の上映作品でも、さりげなく歌の発表会で、子供が国歌を歌うシーンがあります。映画の中に入り込み、一緒に歌って一緒に踊るような鑑賞法で楽しむインドの観客にとって、そのようなシーンもたまらなく心の琴線をくすぐられることでしょう。

ネットが広がり、世界は狭くなりました。どこの文化もいかずにして、情報を集め、楽しむことが可能になりつつあります。片や、日本は<日本人的な心>を失ったといわれて久しい中、インド映画が描いているマインドがどのように受け入れられるのか。今回だけでなく、長い目で見ていきたいと思っています。

執筆者

みのわさゆり
映画配給会社パンドラ

執筆者情報・コラム一覧