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インド新聞 コラム

ボリウッド・ムービー格闘日記

インド映画<マサラムービー>の魅力

このコラムの購読者の皆さんは、年に何本、映画をご覧になるでしょうか。年に1本という方、いや相当な映画オタクだとしても1995年の「ムトゥ 踊るマハラジャ」体験は、新鮮、強烈だったと思います。

インド映画は別名、<マサラムービー>とも呼ばれています。カレーの香辛料などでお聞きになることもあるかと思いますが、<マサラ>とはミックススパイスのこと。愛あり、涙あり、笑いあり、サスペンス、ヴァイオレンスあり。あらゆる娯楽要素を入れるのがお約束。”ナヴァ・ラサ”(9つの情感)と呼ばれる、色気(ラブロマンス)・笑い(コメディー)・哀れ(涙)・勇猛さ(アクション)・恐怖(スリル)・驚き(サスペンス)・憎悪(敵の存在)・怒り(復讐)・平安(ハッピーエンド)を1本の映画に放り込み、歌&踊りを随所に織り込んで出来上がったエンターテインメントフィルム、それが<マサラムービー>です。

多言語国家であり、今もなお階級の格差が激しいインド。だからこそ生まれ、現在に至るまで自国民から愛し、楽しまれているマサラムービー。誰もが楽しめるよう、強烈な暴力シーンやどぎつい性描写はなし。老若男女、言語が違っても、冷房の効いた場内で長時間、ひたすら浮世のつらさは忘れ、映画だけに没頭できる、強烈な、そして経済的なエンターテインメント、それがインド映画の何よりの魅力といえると思います。今の日本映画の現状を考えるとうらやましい限りですが、観客が何を求めているか、料金を払っただけの価値ある娯楽を提供する、そんな基本的なことをいちずに続けています。リメイク・原作の映画化などオリジナリティがどんどん失われている日本映画界やハリウッドを見ていると、自国民の誇り、「インド映画が1番」との声もさもありなん、と思います。

インドでは、映画がナンバーワンの娯楽で、テレビ・音楽・出版界も包括する強大なメディアとして君臨し、音楽のヒットチャートも映画のサントラが上位を占めます。また去年の製作本数は1,150本といわれ、国内に今回公開するムンバイ(ボリウッド・ヒンディ語)以外に、チェンナイ(コリウッド・タミル語)など多言語国家を反映し、多数の製作スタジオがあります。国内の市場の自国映画占有率が圧倒的に高く、たぶんこんなに国民に愛されている・経済効果を生み出している映画は、世界中見渡してもないでしょう。

日本でも西葛西のインド化が言われて久しいですが、いまや世界中にインド人は進出しているようですね。そのおかげで、インド以外の国でヒットチャート、公開ランキングベストテンに入るインド映画も出てきています。また高級ブランド、エルメスの今年のテーマは<インド>で、ベルリン国際映画祭でもボリウッドの特集が組まれ、かのスピルバーグが率いるドリームワークスが合弁で制作会社を設立するなど、「ムトゥ」時代にはキワモノ的な扱いだったインド映画が、ようやく本質的なエンターテインメントとして、世界中から注目され始めてきました。

これから日本とインドの経済交流はさらに活発になっていくのでしょう。ビジネスの成功は、人と人のつながり、互いの理解あってこそ。インド映画を見てみてください。そして、彼らのバイタリティを吸収してみてはいかがでしょう。

執筆者

みのわさゆり
映画配給会社パンドラ

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